インシデント未然防止の、理不尽すぎる舞台裏

現場でヒヤリとする出来事があった。
幸い、事故になる前に未然に防げた。

……だけど、そのあとに残るモヤモヤ感が強かった。

事の発端は、新人さんと先輩の“確認ミス”。

新人さんが別の患者さんの食事を準備し、
「これ配っていいですか?」と確認を持ってきた。

先輩は中身を十分に確認しないまま「いいよー」と返す。

その結果、苗字が同じ別人の食事が準備されていた。

この段階では、誰もそれに気づいていなかった。

それを間一髪で止めたのが発見者と日勤リーダーだった。
すぐに修正し、事なきを得た。

事故にはなっていない。

問題はここからだった。

「で、インシデントレポート書くの、誰?」

気づけば、一番現場を止めた側に書類業務が回ってくる。

一方で、最初に確認を出した側や実行した側は、
そのまま通常業務に戻っていく。

この温度差が、どうしても小さな違和感として残る。

本来インシデントレポートは責任追及ではなく、
再発防止のための情報整理のはずだ。

それは頭では理解している。

それでも現場では、
「止めた人が一番忙しくなる構造」に見える瞬間がある。

未然に防げたことは良かったはずなのに、
残るのは達成感ではなく、静かな疲労感だった。

原因は一つではない。
確認の流れ、情報の見え方、偶然の重なり。

いくつかの小さなズレが重なって起きた出来事だった。

だから結局のところ、
「誰が悪いか」は簡単には決められない。

ただ一つだけ確かに言えるのは、
役割によって負担の出方が変わることがある、ということ。

未然に止めた人が最も忙しくなることがある現場の構造。

その小さなズレが、じわじわと疲れを生んでいる。