介護施設や老健などに家族が入所していると、面会のときに食べ物を差し入れたり、薬やサプリメントを持って行ったりすることもあると思います。
「本人が好きだから」
「これくらいなら食べても大丈夫でしょ」
「辛そうだから、市販の薬を買ってきてあげよう」
家族としては、本人を思っての行動ですよね。
ただ、施設によっては、食べ物や薬の持ち込みについて一定のルールが設けられています。
これは、家族に意地悪をしているわけでも、「何でも施設で管理したい」というわけでもありません。
入所している方の安全を守るために、必要なルールだったりします。
食べ物の差し入れは、職員に確認してから
施設によって違いはありますが、
「差し入れは必ず職員に声をかけてください」
「本人の居室や冷蔵庫に勝手に入れないでください」
「本人に直接食べさせないでください」
などの決まりがある場合があります。
特に老健などでは、入所中に食事形態が変わることがあります。
以前は普通に食べられていたものでも、嚥下機能の低下などによって、現在は食べることが危険になっている可能性があります。
例えば、今まで問題なく食べていたお菓子でも、現在の嚥下状態では喉に詰まらせる危険があるかもしれません。
また、食事量や間食についても、疾患や血糖コントロールなどを考慮して調整されている場合があります。
「家では食べていたから」
「本人が食べたいと言っているから」
だけでは判断できないことがあるんです。
冷蔵庫に入れておけば大丈夫、とは限らない
施設によっては、居室の冷蔵庫を使用する際に申し込みが必要だったり、使用していないときは電源が入っていなかったりすることもあります。
そのため、
「冷蔵庫に入れてきたから大丈夫」
と思っていても、実際には冷蔵されていなかったということもあります。
本人が食べ物を自己管理できない場合は、冷蔵庫の中に入れたこと自体を忘れてしまい、賞味期限が切れてしまうこともあります。
食べ物の持ち込みについては、
何を持ってきたのか、どのくらい持ってきたのか、本人が自分で管理できるのか
なども含めて、職員に一度確認するほうが安心です。
市販薬やサプリメントも、勝手に持ち込まない
もうひとつ気をつけたいのが、薬やサプリメントです。
市販の整腸剤や鎮痛薬、ビタミン剤など、ドラッグストアで簡単に購入できるものもあります。
そのため、
「病院の薬じゃないから大丈夫」
と思ってしまうこともあるかもしれません。
でも、施設では主治医が入所者さんの状態を確認しながら薬を処方しています。
すでに処方されている薬と、市販薬やサプリメントの成分が重なる可能性もあります。
場合によっては、薬の作用に影響したり、重複して服用することにつながったりすることもあります。
だから、
「市販薬だから自由に飲んでいい」というわけではありません。
何か薬を飲ませたい、本人が「これを飲みたい」と言っているという場合も、まず看護師や職員に相談してください。
必要であれば主治医に確認して、安全に使用できる方法を検討します。
「かわいそうだから」が事故につながることもある
施設で働いていると、
「お父さんが辛いって言ってるのに、薬もらえないの?」
「かわいそうだから持ってきました」
というご家族の気持ちも、もちろん分かります。
でも、その気持ちから薬をこっそり居室に置いてしまったり、引き出しに隠してしまったりすると、施設側では薬の管理ができなくなります。
さらに、認知機能が低下している方の場合、
本人が別の入所者さんに渡してしまう。
他の入所者さんが間違って飲んでしまう。
本人がいつ、何を、どのくらい飲んだのか分からなくなる。
そんな思わぬ事故につながる可能性もあります。
「自分の家族に少し渡しただけ」のつもりでも、施設という集団生活の場では、それだけでは済まないことがあります。
「ダメ」だけではなく、代わりにできる方法を確認する
もし差し入れをしたいのであれば、最初から禁止されているものだと決めつけず、職員に相談してみてください。
例えば、
「これを食べさせたいのですが、大丈夫ですか?」
と持ってきたものを見せれば、現在の食形態や体調などを確認したうえで、食べられる方法を検討できることがあります。
施設によっては、
「面会時に職員へ預けてください」
「おやつの時間に提供します」
など、安全に食べられる方法を提案してもらえる場合もあります。
薬についても、
「本人がこの症状を辛がっています」
「市販薬を飲ませたいのですが大丈夫ですか?」
と相談してください。
必要なら主治医に確認してもらうことができます。
「持ってきたらダメ」ではなく、「どうしたら安全にできるか」を施設と一緒に考えることが大切です。
施設のルールは、入所時だけでなく確認しておく
施設のルールは、入所時に説明されることが多いと思います。
ただ、家族もすべて覚えているとは限りません。
そのため、施設側も、
- 持ち込みできる食べ物
- 持ち込みできない食べ物
- 冷蔵庫の使用方法
- 薬やサプリメントの持ち込み
- 面会時に本人へ直接食べさせる場合の確認
などを、できるだけ具体的に伝えておくことが大切です。
口頭だけではなく、入所時の説明書類や掲示物などで「OKなもの・NGなもの」を分かりやすくしておくと、ご家族にも伝わりやすくなります。
家族の「してあげたい」は、悪いことではない
施設にいる家族に、
「好きなものを食べさせてあげたい」
「辛そうだから薬を飲ませてあげたい」
と思うのは、決して悪いことではありません。
むしろ、大切に思っているからこその行動だと思います。
ただ、施設に入所している間は、本人の健康状態や嚥下状態、服薬状況などを施設側でも把握しています。
だからこそ、何かしてあげたいと思ったときは、こっそりやるのではなく、まず職員に相談してほしい。
そのほうが、本人にとって安全な方法を一緒に考えることができます。
施設のルールには、それぞれ理由があります。
「ルールだからダメ」ではなく、
「なぜそのルールがあるのか」
を知ってもらうことで、ご家族にも協力してもらいやすくなるのではないかなと思います。