施設で働いていると、毎日なんやかんや慌ただしい。
コール、記録、食介、排泄介助、急変対応。
出勤した瞬間から、
「今日ちょっともう帰りたい」
みたいな日も普通にある。
そんな日常の中で、
週に1回くらい現れる存在がいる。
母体病院から来る、
“舘ひろし系先生”である。
もちろん、普段来ている先生が嫌なわけではない。
むしろ穏やかだし、怒鳴らないし、
施設職員としてはかなりありがたいタイプだと思う。
ただ――
カテゴリが違う。
いつもの先生が、
“近所の安心感あるおじいちゃん”
だとしたら、
母体病院から来る先生は、
“ドラマに出てくる白衣のイケオジ”
なのである。
もう別の生き物。
白衣サラッ。
メガネ。
低めの声。
なんか姿勢いい。
そしてだいたい優しい。
毎週その先生に新患報告をする機会があるのだが、
リーダー表を見て、
「あ、今日わたしか」
となったあと、
「しかも先生の日やん❤️」
と、ちょっとテンションが上がる。
別に恋とかではない。
ただ、
疲れた現場に突然“ドラマの空気”が混ざると、
人間ちょっと元気になるのである。
特に好きなのが、
「鍵開けてもらえる?」
イベント。
普段なら、
「はいはい、鍵ですね〜」
で終わる業務なのに、
白衣のイケオジに低音で
「ごめん、鍵開けてもらえる?」
と言われると、
「はい❤️今開けます❤️」
みたいな気持ちになる。
もちろん表情は真顔である。
ちなみに古参職員によると、
その先生は昔から有名だったらしい。
「あの先生、昔から貴公子って言われてたからね〜」
と、普通に言われた。
貴公子。
令和の介護施設で、
そんな単語が自然に飛び交うとは思わなかった。
でも会うと分かる。
なんか空気が違う。
たぶん若い頃、
めちゃくちゃかっこよかったんだと思う。
いや、今も普通にかっこいい。
でもそれ以上に、
長年ずっと“感じのいい先生”として存在してるのが強い。
施設って、
嫌な人の話も秒で広まるけど、
優しい人の話も、
何年単位で語り継がれる世界なのだ。
たぶん全国の施設に1人はいると思う。
現場職員のHPを、
ほんの少し回復していく、
“舘ひろし系先生”が。