施設に来る先生はだいたい優しい

施設で働いていると、独特なタイプの先生に出会う。

いつもどこか体調が悪そうだったり。
PC画面が見えなくて、やたら顔を近づけていたり。
達筆すぎて、カルテが解読不能だったりする。

病院勤務の頃とは違う、“施設ならではの空気”がそこにはある。

施設に来る先生は、わりと高確率でクセが強い。

「針の向き、これで合ってる?」と、こちらに確認してきたり。
自分の補聴器をどこに入れたかわからなくなったり。

最終的には、回診につくナース側で、
「先生がどっちのポケットに補聴器を入れたか確認しておく」
という、謎マニュアルまで爆誕した。
完全なる“先生対応マニュアル”である。

一方で、急性期病院の感覚がふと出る瞬間もある。

「酸素MAX5Lで」

いや先生、ここ中央配管じゃなくてボンベなんです。
その流量、わりとすぐ空になります。

「カテラン針ある?」

だから先生、ここ施設なんですって。そんな特殊な針ありません。

たまに、先生の頭の中の“急性期の世界線”が、そのまま施設に流れ込んでくる。

でも、不思議と嫌な先生は少ない。

むしろ施設に来る先生って、だいたい優しい。

設備も限られている。検査もできない。
夜間対応だって病院ほど整っていない。

そんな環境でも、穏やかに利用者さんを診てくれる先生が多い。

だだから現場側も、
「また補聴器なくした!」
「その酸素量はボンベ消える!」
とツッコミを入れながら、結局みんなで支えている。

施設って、完璧なシステムで回っているわけじゃない。

ちょっと抜けている人を、周囲が自然にフォローして。
足りない部分を、誰かが埋めて。
そんな“人間同士の調整力”で回っている場所なのだと思う。

そしてたぶん、施設に長く来てくれる先生ほど、そういう空気に馴染んでいる。