全部同じたい焼きなのに、利用者さんはちゃんと選んでいた。

今日、おやつの時間に介護職の女の子が、お盆におやつをたくさん乗せて利用者さんのところを回っていました。

「お好きなのどうぞ。」

私はその様子を見ていたら、

「みんなちゃんと選びますよ。」

と教えてくれました。

正直、半信半疑でした。

認知症が進んでいる方もいるし、普段あまり意思表示をしない方もいます。

「本当に選べるのかな?」

そう思っていました。

そして今日、私もやってみました。

すると驚きました。

普段、「これがいい」「あれがいい」とほとんど言わない利用者さんまで、お盆をじっと見て、「これ」と指を差したり、手を伸ばしたりして選ぶんです。

中には、

「え、この人も選べるの?」

と思ってしまうくらい、普段の様子からは想像できない反応を見せてくれた方もいました。

そして、もっと驚いたことがあります。

お盆に乗っていたのは、全部同じたい焼きだったんです。

最初は思いました。

「全部同じたい焼きなら、どれでも一緒じゃない?」

でも、利用者さんはちゃんと選ぶんです。

右端のたい焼きを選ぶ人。

真ん中を選ぶ人。

少し眺めてから決める人。

すぐ手を伸ばす人。

見た目は同じたい焼きでも、一人ひとりが「自分で決める」という時間を過ごしていました。

その光景を見て気づきました。

利用者さんが選んでいたのは、「たい焼き」だけじゃない。

「自分で決めること」だったんだな、と。

介護施設では、安全や効率を優先しなければならない場面がたくさんあります。

時間も限られているし、つい「はい、どうぞ」と渡したほうが早いこともあります。

でも、ほんの数秒でも「どれにしますか?」と聞くだけで、その人が自分で決める機会になります。

それは、おやつ一つの話ではありません。

洋服を選ぶ。

飲み物を選ぶ。

座る場所を選ぶ。

できることなら、本人に選んでもらう。

それだけで、その人らしさを大切にできる場面は意外とたくさんあるのかもしれません。

私は看護師なので、体調や処置、薬のことに目が向くことが多いです。

でも今日は、介護職の女の子から大切なことを教えてもらいました。

「選んでもらう」ということです。

全部同じたい焼きなのに、利用者さんはちゃんと選んでいました。

あの時間に必要だったのは、「どのたい焼きか」ではなく、「自分で選んだ」という体験だったのかもしれません。

これからは、おやつの時間にできるだけ「お好きなのどうぞ」を続けてみようと思います。

たった数秒のことですが、その数秒が利用者さんの一日を少しだけ豊かにしてくれるような気がしました。