介護施設の夜勤って、たまに“ホームルーム”になる。
もちろん、いつもじゃない。
普段の朝はもう少し活気がある。
「今日寒いね」
「朝ごはん何かな」
なんて声が飛んで、職員同士も多少しゃべっている。
でも、ある日の朝。
トイレ介助の方から声が聞こえてくる。
「立って!」
「もう、いいから!」
「捕まんないで立って!」
ああ。
今日はあのおばあちゃんの“朝ぐずり”の日だ。
そして同時に察する。
――今日は、ホームルーム状態になる。
その空気は、驚くほどフロア全体に広がっていく。
誰も雑談しない。
必要最低限しかしゃべらない。
みんな死んだ魚みたいな目になっている。
テレビはついているのに、妙に静か。
夜勤明けの相方も、存在感を消し始める。
たぶん、夜勤の朝っていうのも大きい。
そこにいるのは、私と、その介護員さんの相方くらい。
人数も少ない。
逃げ場もない。
しかも偉い人もいない。
だから小さなピリつきが、そのままフロア全体に広がっていく。
完全に、担任がブチギレてる時のホームルームだった。
しかも面白いのが、入居者さん達のほうが空気を察知するのが早いことだ。
いつもなら何回もコールを押す人が、今日は静か。
おしゃべりな人も口数が減る。
時々、わりとしっかりしている入居者さん同士で、ひそひそ話していることがある。
「またあの人、きついもんねえ……」
多分、入居者さんのほうが先に察知している。
みんな伊達に年を取っていない。
もちろん、厳しい人が全部悪いとは思わない。
忙しい朝だし、介助が大変なのも分かる。
でも、本当にいつ誰が見ていても同じ態度なら、ある意味すごいと思う。
ただ、偉い人がいない時だけ空気が変わるなら、私はちょっと違うと思ってしまう。
夜勤明けの少人数フロアで、朝から全員が空気を読み始める。
あの独特の“シン……”とした感じ。
介護施設で働いていると、たまに学校みたいな朝がある。