■ 夜勤中のタバコ問題より、怖かったもの

夜勤中、非常口からタバコを吸いに行っている職員がいるらしい。

しかも休憩時間外に、15分ほどいないこともあるという。

私は喫煙者ではない。
正直、タバコそのものにはあまり興味がない。
元喫煙者だし、家族もヘビースモーカーなので、「まあ吸いたい人は吸うよね」くらいの感覚でいる。

ただ、その日妙に空気がざわついていた。

看護部長と役職者たちが集まり、貼り紙を作っている。

「見たことある?」

そう聞かれて、
私は「休憩時間に吸いに行く人なら見たことあります」とだけ答えた。

だって、本当にどうでもよかったからだ。

でも、なんだろう。

誰が、いつ、どこから出て、何分いなかったか。

それを誰かがずっと見ていて、上に報告していたという事実のほうが、私には妙に怖かった。

しかも、そのフロアは、以前私のことも細かく“上に入れた”人がいる、いわゆるチクリ魔フロアである。

「ああ、やっぱりこの施設ってそういう空気あるよな」

と、妙に納得してしまった。

もちろん、夜勤中に長く離席するのは問題なのだろう。
人数が少ない夜勤では、一人抜けるだけで現場負担は変わる。

でも私は、ルール違反そのものより、
“監視し合う空気”のほうが苦手だ。

直接言わず、
裏で共有され、
役職者が貼り紙を作り、
皆が「誰だろう」と空気を読む。

老健という閉鎖空間では、
時々こういう“静かな怖さ”がある。