褥瘡のデブリードマン(壊死組織の除去)後、出血が止まらない利用者さんがいました。日勤帯から「かなり出血している」と申し送りがあり、抗凝固薬は休薬、止血剤も開始。私は外科病棟や高齢者施設で多くの褥瘡処置を経験してきたため、「止血剤も始まったし、そのうち落ち着くだろう」と判断し、17時頃に日勤の処置係看護師へ、当てガーゼを厚めにすること、血液が流れてもガードできるようフラットシート(平おむつ)を巻いておくことをお願いしました。
フラットシートを巻く処置までは日勤看護師が行い、その後の見守りや介助などのケアは夜勤介護スタッフが担当するという流れで夜勤帯へ入りました。
20時頃、私が別フロアでの業務に入っていると、介護スタッフから「服まで血液で汚染してしまった」と内線が入ります。「30分ほど対応に行けないので、まずはベッドで横になって待っていてほしい」と伝え、急いで現場へ向かいました。
しかし、そこで目にした光景に私は胸を痛めることになります。
1. 「巻く」ことはできても、血液の「流れ」を予測してない
フラットシートを確認すると、端が少し汚れているだけで、血液はすべてその外側へ漏れ出していました。大転子部(お尻の横の骨が出っ張っている部分)の褥瘡だったので、横になれば血液が下側(お尻側に伝漏れ)へ流れるのは当然です。
日勤看護師は「フラットシートを巻く」という行為自体はできていても、**「寝ている利用者さんの血液が、重力でどちらに流れるか」**という一歩先の予測と、介護スタッフへの具体的な送り(「下側に流れやすいから気にしておいて」など)が抜けてしまっていたのかもしれません。
2. 「寝てもらう」ことの、本当の意味
さらに切なかったのは、利用者さんの状態でした。血液で濡れた下着、生理のときのように赤く染まったズボン、血のついたシーツ。そのすべてを身につけたまま、ただベッドに横たえられていたのです。
介護スタッフは、私が伝えた「横になって待ってもらう」という指示を実直に実行してくれました。でも、血まみれの冷たい衣類のまま30分間も過ごすのが、どれほど不快で寒かったか。
ワンオペ(別フロア対応)の私を待つ間の30分、完全に着替えさせるのは難しくても、
汚れた衣類をひとまず外す
新しいフラットシートを敷いてその上に寝てもらう
バスタオルを掛けて保温する
といった、**「その場をしのぐための思いやり(中間ケア)」**が何か一つでもできなかったのだろうかと、やりきれない気持ちになりました。
3. 朝の薬のヒヤリハット
そして朝には、別のスタッフから「薬の日付の列を間違えて、全部封を開けてしまいました」との報告。今回は幸いにも、週末用に内容が同じセットだったため大事には至りませんでしたが、「今日の日付の確認」という初歩的な確認への意識が弱かったと感じざるを得ませんでした。
求められるのは、指示の裏にある「一歩先を読む力」
人間だからミスはあります。私だって完璧ではありません。スタッフたちも決して悪気があったわけではなく、それぞれが自分の持ち場で「言われた通り」に必死に動いてくれていたのだと思います。
しかし、医療や介護の現場で本当に求められるのは、「指示された行為」のその先にある想像力ではないでしょうか。
「このまま血液はどちらへ流れていくだろう?」
「血まみれのままで、寒くないかな? 気持ち悪くないかな?」とか。
薬の日付間違いに関しても
「薬の日付合ってるかな?内容変更の情報あったかな?」とか。
相手の立場に立つ想像力と、次に起こるリスクを予見する力。それこそが、職種の垣根やマニュアル、指示書の言葉を超えた「本当のケア」に繋がるのだと、改めて深く考えさせられた夜勤でした。