施設の胃瘻部屋では、毎朝ラジオを流している。
特に意味はない。
利用者さんが聴いているのかも正直わからない。
ただ、いつもの朝の風景としてそこにある。
ところが最近、その部屋のラジオにノイズが入るたびに鳥肌が立つようになった。
理由は単純だ。
その部屋にいる利用者さんが、長時間の無呼吸を繰り返しているからである。
ラジオに「ザッ」とノイズが入る。
すると私は思う。
「生きてるよな……?」
もちろん、ラジオが無呼吸を感知しているわけではない。
医学的根拠もない。
でも現場にいると、不思議と気になってしまうのだ。
もう一人いた
ある日、別の看護師が言った。
「ラジオにノイズ入ると怖くない?」
私は思わず、
「わかる」
と答えた。
まさか同じことを感じている人がいるとは思わなかった。
二人ともオカルト好きではない。
むしろ根拠のない話は苦手なタイプだ。
それでも、その利用者さんの状態が悪化している今だけは、なぜか気になってしまう。
ベテランほど説明できない感覚を持っている
介護や看護の現場では、ときどき説明できない感覚がある。
「今日はなんか違う」
「この人、昨日と様子が違う」
「なんか嫌な予感がする」
後から考えると、顔色や呼吸、反応、表情など、無意識にたくさんの情報を拾っていたのかもしれない。
人は意外と高性能なセンサーなのだ。
たぶんラジオは関係ない
たぶんラジオは関係ない。
本当に関係ないと思う。
でも明日の朝も、ノイズが入ったら私はたぶん利用者さんの顔を見に行く。
そして呼吸を確認する。
そういう職業病みたいなものなのかもしれない。